【求人】夢の中の人探しスタッフ【存在しないはずの求人】

夢の中の人探しの求人記事のアイキャッチ画像

今回ご紹介するのは「夢の中の人探し」という、通常の探偵業務の枠を明らかに逸脱した募集です。

尾行も聞き込みも行いません。

対象は現実に姿を現さず、依頼者の夢の中にだけ現れる人物です。

依頼の多くはこう語られます──「見知らぬ誰かが毎晩同じ言葉を繰り返す」「亡くなった家族が“助けて”と呼ぶ」「会ったことのない人物が名乗り、地名と時刻を告げる」。

一度であれば偶然で済むでしょう。

けれども、細部が一致した状態で繰り返される“呼びかけ”は、偶然と呼ぶにはあまりに執拗です。

本業務では、依頼者の睡眠リズムに同調する簡易儀式を経て、調査員が**依頼者の見る夢と“隣接した層”**に潜行し、そこで出会った人物の容貌・言動・環境を記録します。

表向きは調査ですが、戻ってこられなかったスタッフの記録が存在することを、最初に明記しておきます。

あなたは、この求人に応募する覚悟がありますか。

サンゲリサーチ 事業番号0011

目次

仕事の概要

お仕事の概要と書かれた画像

本業務は、以下の手順で進行します。各工程に定められた合図や禁止事項があり、遵守できない方は応募できません。

1)事前聞き取りと設計

依頼者から、夢に現れる人物の特徴(年齢・性別・服装・声・口癖・仕草・同行物・出没場所・発現時刻)を可能な限り精密に収集します。

特に匂い・温度・足音など感覚的な証言は層同調の手掛かりとなるため、欠かさず記録します。

必要に応じて依頼者が描いたスケッチ、当該人物が口にした語句、関連する現実の出来事(事故・忌日・転居・失踪届など)を整理し、潜行プロトコルを設計します。

2)同調儀式と入眠

専用仮眠室(遮光・電磁遮蔽・温湿度固定)に入室し、依頼者と同期した呼吸法、低周波ホワイトノイズ、心拍同調タッピングを3分実施。鏡・時計・金属アクセサリーの持ち込みは禁止です。

調査員は**帰還合図(内語)**を暗唱し、手首の振動アラームを0:00基準で装着。植物性睡眠補助剤の投与は医療担当が判断します。

3)夢内観測・接触

潜行層では、現実世界の物理法則や地形は安定しません。

昼夜が反転し、建物が繋がっていたり、知人の顔が別人の輪郭に重なったりします。

調査員は**“固定点”**(階段の踊り場、壊れた街灯、音の止む路地など)を見つけ、そこから対象人物の痕跡(視線、呼気、衣擦れ、呼称)を追います。

接触が成立した場合でも、名前を名乗らず、握手せず、贈答物を受け取らないのが原則です。

会話は三往復以内、質問は一度に一項目のみ、肯定疑問(〜ですよね?)は禁止です。

4)帰還・報告

覚醒後は3分以内に一次報告書(紙)へ走り書きし、5分以内に電子記録へ転記。時間が経つほど記憶の輪郭が崩れるため、順序・匂い・音の重なり・温冷感を優先的に記します。

報告書は青色ボールペンのみ使用(黒は“別筆記と混同”する事例があるため禁止)。

映像記憶が強い職員は、スケッチを別紙に起こしてください。

求人条件

求人条件と書かれた画像

応募資格は以下になります。

  • 入眠・起床の自己管理ができる方(不眠・過眠の重篤な既往がないこと)
  • 夢内容を言語化し、比喩を避けて記述できる方
  • 視覚・聴覚の異常感覚に動揺しない方
  • 指示に従い、合図・禁止事項を厳密に守れる方
  • 求人数:若干名
  • 勤務地:都市部/郊外の専用施設(隔離区画あり)
  • 給与:1案件 30万円〜(危険手当・深夜手当別途)
  • 支給物:制服・仮眠室・記録帳・帰還アラーム
  • 年齢:20歳以上

※勤務終了=覚醒+一次報告提出の双方を満たした時点。

覚醒が確認できない場合、報酬は支払われません。

注意事項

注意事項と書かれた画像

以下は過去の勤務記録に基づく必須ルールです。

破った職員は、いずれも“帰社確認が取れていない”か、あるいは別名義で名簿に重複登録されています。

夢の中で自分の名前を名乗らないこと

名乗った職員は、翌日から同僚に“名字でしか呼ばれなくなった”のち、三週間後に誰からも名前を思い出されなくなりました。

本人の署名だけが空欄になった報告書が残っています。

鏡・水面・ガラスに映る自分を直視しないこと

映像が対象人物の顔へ変質する事例が多数。

直視し続けた職員は覚醒せず、心拍は安定しているのに瞳孔反応のみ不在の状態が継続しています。

依頼者に話しかけないこと

同一層で依頼者の姿を見ることがあります。

会話を交わした職員の報告書は人称の主語が依頼者名に置換され、本人の記憶に「自分と依頼者の境界が薄い」自覚が生じました。

“帰り道”のサイン(出口・改札・非常口)の使用禁止

それらは現実側に繋がっている保証がありません。

実際に非常口を通った職員の肉体は覚醒せず、夢内での“歩行距離”に比例して体温が低下していきました。

対象者からの“個人的な呼びかけ”に応答しないこと。

「あなたを待っていた」「やっと来た」という語りかけに応じた職員は、帰還後も**自身の睡眠時間に“二人分の呼吸音”**が記録され続けました。

言葉を持ち帰らないこと

対象者が囁いた言葉を覚醒後に復唱した職員の録音は、発話部分だけホワイトノイズ化。

紙の報告書では、当該箇所が青インクごと紙繊維から剥離していました。

数を数えないこと

夢内で同行者や階段段数を声に出して数えると、余分な人数や余剰段が固定化されます。

帰還時に“同行者が一人増える”事例はこの違反に起因します。

見覚えのある家を見つけても入らないこと

幼少期の自宅や祖父母宅など“懐かしい場所”は層の固定点と見せかけた吸着点です。

玄関をまたいだ職員は、報告書の日付が過去方向へ二日分ずれる症状を示しました。

匂いを辿りすぎないこと

香水・線香・潮の匂いは対象者の痕跡である一方、戻り路を上書きします。

強い匂いを追尾したケースでは、帰還合図を唱えても振動アラームが起動しない例がありました。

目覚めた直後、隣のベッドを確認しないこと

そこに寝ているのが依頼者であってもです。視認した職員は、名簿照合時に依頼者の欄へ自分の生年月日が自動入力される異常が報告されています。

戻れないと判断したら“内語の帰還合図”を三拍で唱えること

声に出さず、心中のみ。声に出した職員は、自分の声が“層の外側”から返答する現象を記録し、その後の覚醒は確認されていません。

終わり

最後にと書かれた画像

以上が「夢の中の人探し」の募集内容です。

対象が実在するのか、依頼者の未了の感情が像を結んでいるだけなのか、私たちにも断言はできません。

ただ、積み重なった報告は示しています──夢は個人の内面に閉じた映像ではなく、薄く接する別の地層であり、そこでは名や数や約束が現実よりも強い力を持つのだ、と。

本求人は現実には存在しないはずです。

それでも今夜、あなたが眠りに落ちる直前、耳の奥で**自分の名前を呼ぶ“知らない声”**を聞いたなら

──それは偶然ではありません。

起き上がって鏡を覗かないでください。

時計も見ないでください。

静かに目を閉じ、帰還合図を忘れないでください。

次の勤務は、もう始まっています。

▼動画で見たい方はコチラ▼

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次